事業継承型業務資本提携(M&A)

後継者問題で経営の存続を考えた企業との事業継承型M&Aを実現。
業務・資本提携をした今回のM&Aについて、株式会社タマサービスの木暮会長に話を伺う。

Q1 御社の沿革を簡単に教えてください。

弊社はクリーニング業として1956年に創業して以来、順調に業績を伸ばしてきました。一時は、取次店のスタイルで店舗が200~300店にまで増え、営業の地域も東京、埼玉、群馬まで広がっていきました。しかし、取次店のような一部を業務委託する形では、従業員の教育・指導がとても難しく、お客様からのクレームも増えてしまいました。また、取次店経営者の裁量によってお客様への対応がバラバラになってしまい、顧客満足度が上がらないという問題に直面しました。そこで、直営店なら基礎教育や研修をすることで接客技術を向上できると考え、業界では早い時期に直営化を進めました。同時に少数店舗で利益の出る形に移行し、現在は直営54店舗、委託取次7店舗計61店舗を経営しています。

Q2 M&Aを考えたきっかけは?

我々夫婦の間には子供がいませんでしたので、後継者の問題が大きかったです。中小企業は世襲が多いので、子供がいないと後継者を探さなければいけないということになります。もちろん社内で社長ができる人材がいれば良いのですが、銀行の保証問題とか、個人の負担が大きい為になかなか難しく、「僕が死んでしまったら、この会社はどうなるのだろう」と思った時からM&Aを考え始めました。

今は、企業のM&Aを仲介する会社もたくさんあって、より良いノウハウを持っていることも知っていましたが、仲介の会社を通せばそれなりの費用が発生して会社に負担がかかります。それよりも、普通の中小企業が親から子に会社を引き継ぐような形のM&Aが良いのではないかと考えるようになりました。それは長いお付き合いをして信頼関係を築いている相手でなければ簡単にはできません。同じクリーニング業を営む沼崎社長とは先代の時から交流があり、15年ぐらい前からそんな話をしていました。沼崎社長がまだ20代の頃にアメリカの展示会に一緒に行ったこともありますし、ユーゴーに経営の相談に行ったこともあります。いろいろヒントをいただき、非常に良い学びがありました。そうした中で培った社長同士の信頼関係を生かし、今回のM&Aをすることになりました。

Q3 M&Aまでにどんな準備をしましたか?

M&Aというゴールに向かって経営者がしなければならないのは、良い会社にするということです。良い店舗があって、良いお客様に恵まれて、良い従業員がいて、利益が上がって、財務状態がきちんとしている、そんな会社なら、社員にも、事業継承する会社にも負担をかけずスムーズに引き継ぐことが出来ます。良い会社にする努力を続けてきて、今の年齢になってやっとM&Aが出来たということです。M&Aを考えている人に自分の経験を話すとしたら「僕は15年かかったよ」と最初に言いたいです。その努力を怠ると、後継者に苦労を押し付けることになります。「もうダメだから頼む」ではなくて、良い状態の時にバトンタッチすることが大切だと思います。

Q4 今後の成長戦略は?

弊社は一つの大型工場で、北は埼玉の小川から東は国分寺、南は八王子までの広いエリアをカバーしています。1日平均1万点、ピーク時には2万点を扱える大型工場は業界では珍しく、欠点も利点もあります。その利点をどう生かせるかが重要になると思います。
ユーゴーはブランディング、マーケティングの能力が優れた会社なので、それがタマサービスに移植されることも期待していますし、すでに良い形で進んでいます。
また、社員同士が馴染んで行くことも大切です。弊社の従業員は、今回M&Aをすることで色々な不安があったと思いますが、沼崎社長や本山室長が店舗と工場の中に入ってface to faceで社員と話をしてくれて、不安を払拭してくれました。スマイルだけでも人間関係を構築することが出来ますから、そういう関係作りの大切さをよく理解している人たちだと思いました。

ユーゴーにはサンキューカードという理念があります。私と家内はこの内容にとても共感しました。クリーニング屋をやって苦労してきた事の答えや、社会人としての行動がサンキューカードの中に書いてあるのですから。新人にはまだピンとこないと思いますが、ベテランになればなるほど思い当たることがある内容だと思います。タマサービスはベテラン社員が多いのですが、サンキューカードを読んでもらうと「こういう考えの会社なら大丈夫だ」と一気に安心感が広がった気がしました。

Q5 自分で育ててきた会社をM&Aをして良かったことを教えてください。

キャッシュレス化・スマホ対応や5G等、新しい世の中の変化に積極的に対応するには、社長が若くなくてはいけません。未来に向けた展望を持った人がトップになれば社員も幸せです。実際に僕より10歳以上若い沼崎社長が新しいことをダイナミックに取り入れて、会社は若返りました。社長が歳をとると社員と距離感が出来やすいですね。沼崎社長はそういう距離感をスパッとなくしてくれました。
就業規則の整備も進みました。その目的は、規則を理解することで社員が自分の可能性を広げ、お客様に喜んでもらえる仕事をやっていくことです。ユーゴーが入ったおかげで働きやすい環境の整備が出来ています。

Q6 力こぶHLDGSに加盟して、どんな効果がありましたか?

力こぶホールディングスというのは、やる気のある人を支援するための組織だと思います。タマサービスの場合は同じクリーニング業なので、規模が大きくなってコストや求人が有利になったということがありますが、もっと重要な効果は社員の気持ちの変化です。ユーゴーには「サービス業はファンビジネス。お客様に好きになってもらう仕事。」という考えがあり、誇りをもって働ける職場を作る上でとても良い考えだと思います。人を育てたり起業を支援をしたり、働きやすい職場を作ったり、そういう環境が力こぶホールディングス全体にあります。それがシナジー効果となって、弊社の社員のモチベーションが向上しました。

Q7 M&Aを経た現在のお気持ちをお聞かせください。

M&Aというと「会社を売っちゃったんだ」とネガティブな見方をされる事もありますが、実際は全然違っていて、社員の幸せを願ってお互いに会社を良くしていこうと未来志向で協力しているわけです。まだ始まったばかりですが、社員も落ち着いていて、繁忙期でもスムーズに仕事をこなしています。次の決算内容を見れば、またやりたいことも出てくるでしょう。
社長交代の時期は重要で、僕は60代前半で遅かったかもしれないですが、それでも何か問題が起きた時はまだ力を貸すことはできます。40代から準備したM&Aを60代で実行して、5年ぐらいは品質保証として会社に残ってからリタイアするイメージですね。グループ内の社員の信頼が一層深まるように手伝いながら、もう少しタマサービスを見守っていきたいと思います。

木暮 朗

株式会社タマサービス 取締役会長

1955年6月25日生まれ
(血液型)A型、蟹座
(趣 味)剣道三段、ゴルフ(全盛期シングルだった)、乱読書、車好き

【学歴・職歴】
東京農工大学、工学部生産機械工学科を卒業、1979年4月富士ゼロックス株式会社に入社。1984年4月、株式会社タマサービスに入社。 ワイシャツ専用工場建設・大型直営店出店、多様化した衣料に対応できる設備の導入・高速立体仕分け装置の導入などタマサービスの成長を支える。1996年12月代表取締役社長に就任。 ソルベイ社、東京洗染、日華化学の協力のもと、ソルカンドライ機の導入開始や、システム24とソフトウェア運用支援サービス契約を締結、直営店の労務管理のシステム化、営業データの活用などを推進。 2007年洗浄状態をモニターできる監視システムを導入、ウィッシュと改善活動支援サービス契約の締結。ワイエイシイの協力のもとジャケット専用人体フォーマー導入やジャッケットの自動採寸機構などを有し品質/生産性に優れ働きやすい仕上げラインを構築。合わせて立体ハンガーの導入を行う。 2018年10月、木暮朗が取締役会長に就任し現在に至る。